へうげもの第9服感想−茶鬼、散る。

へうげもの(9) (モーニング KC)

へうげもの(9) (モーニング KC)

へうげもの第9服を昨日読んだんですけど、もう本当に凄すぎて未だに興奮しています。あの凄さを見知らぬ誰かに伝えたいと思ったけれど、ここんところtwitterの独り言投げっぱなし生活に慣れ切ってしまって全く言葉が出てきません。どんな讃辞を尽くしても足りない位の途方もない面白さと狂気。以下、内容にがっつり触れてる感想なので未読の方はご注意あれ。


茶にとり憑かれた人々の業や欲、そこから生まれる可笑しさと悲しみ。そして長年その頂点に君臨し、圧倒的存在感で暗躍してきた数寄者たちのゴッドファーザー千利休。今巻はその利休切腹という、この物語においてある意味最大の山場を迎えました。作中、「茶鬼」と称されたこの巨魁の最期を描くにあたって、作者である山田先生もまた「漫画の鬼」となり、画面から溢れ出るような異常な気迫がガンガン伝わってきて、ページをめくるたびにうめき声やら溜息やら涙やらが洩れました。白装束どころかもろ肌を脱ぎ(筋骨隆々!)、秀吉配下の屈強な武将達を笑ってしまう位の超人的な暴力でなぎ倒しながら末期の茶席へと向かう利休。同じく白装束どころか宗匠好みの黒に身を包み迎え撃つ介錯役の古田織部。師弟最期の茶席は究極の「もてなし」対決となりました。顔芸とも言える織部の表情は、普段は無邪気で「萌え」以外の何物でもないのだけど、あの大きく見開かれた瞳には本当に胸打たれました。あれは漫画史に残る屈指の名場面だったといっても過言ではないと思う。(ひとしきり泣いた後は、唐突なヨン様登場だのドリアン茶席だの物凄い落差で笑わされたけれど)利休亡き後の織部の活躍は歴史の上では知ってはいるけれど、山田先生はどう落とし前をつけてくれるのか。思いも寄らぬ解釈であっと言わせてほしい!物語はまだ続いているけど、もう現時点で私にとっては大傑作です。本当に面白い。このモチベーションを落とさずにどこまで突っ走ってくれるのか、楽しみで楽しみでしょうがない。